某掲示板の某スレを見返して思い出したんですが、7巻でもというか、7巻に収録された7章2の回(P.42)でも誤植があったんですよね。
エリンさんのモノローグで、「婿」であるべきところを「嫁」と。
あれも当時スレでは話題になったのに、自分を含めて誰も担当に知らせようとはしなかったんだな、と。
担当さんは結構ネット上のリサーチをしていて、「当然このスレも見てるだろう」みたいな楽観があったけど、修正はされなかった。
今回の箇所も、雑誌掲載時に気づいて報告していれば……と思うと、本当に残念。
私はこの回の号を買ってなかったからなあ。
さて、漫画の原稿にどうやってセリフなどの文字が入れられるかをご存知の方はどのくらいおられるでしょうか?
ジュンク堂などのコミックフロアにはよく複製原画が展示してあるので、ご覧になった方もおられるのでは。
私が20年前くらいに某雑誌の編集部のコミックセクションの編集アシスタントをしていた頃は、こんな感じでした。
- 作家さんからネームが届く。当時だから大抵FAX。
- 編集担当が、そのFAXからセリフなどを1字1句違わぬように抜き書きして写植屋さんに発注する。
- この際の抜き書きというのは、原稿用紙上で改行まで施された状態のものです。漢字は何書体、カナは何書体と字体の指定をし、セリフの文字数とそれが入るスペースからはじき出した級数も指定してあります。総ルビあるいはパラルビもここで指定します。シリウスの掲載作品は総ルビ。総ルビの場合、ネーム原稿の隅に「総ルビ」と指定するだけで、常識的な読みのルビを写植屋さんが振って出力してくれます。作品独自の読みをさせるもの(「真王」=ヨジェとか)には、さすがに編集者側が個別にルビを振りますが、「四日後」のルビなんていちいち指定しません。対してパラルビの場合は、ルビを施す漢字にマーキングすることで写植屋さんに指示を出すのです。
- 写植屋さんから上がって来るのは、真っ白の印画紙にセリフの塊が順に並んだものです。作家さんから届いた生原稿に、その写植を切り抜いてペーパーセメントで貼り込んでいくんですね。私がやっていたのはこの部分(と指定紙の作成)。吹き出しの丸みに合わせて印画紙の角を落としたりもしますし、たまに計算が狂ってしかるべき位置に収まり切らなかったりすると、セリフの塊を1行1行スライスして、文字の左右の余白をコンマ数ミリくらいずつ削ぎ落として行間を詰めることで帳尻を合わせたりもしていました。ルビがついた行が多いと行間も余計に必要なので、削るのが大変でした。ベタの上の白抜き文字とか、絵柄に乗る文字などは原稿には直接貼り込みません。原稿にトレペをかけた上に写植を貼って、「白抜き」あるいは「文字の周囲を白フチ○ミリでくくる」などの指定を書き込んでいきます。その指定通りにDNPさんが白黒反転とか面倒な作業をしてくれてたのですね。
原稿自体への作業はここまでで、あとはノンブルやハシラの指示を出すための「指定紙」というものを作らなければならないのですが、そっちの説明は割愛。
上記のプロセスであれば、今回のような誤植が起こるタイミングは1か2です。ただ、DTPが普及した今は、当時とは制作プロセスが違うかもしれない。先生はComicStudioで入稿なさっているみたいなので、そこから先でわざわざ、昔ながらのアナログな行程に戻るとは思えないので。
もし先生がセリフまで本番の書体で入れて入稿しているのなら、責任の"一端"は先生にもあるとは思います。だけど、あの書体は普通にMacに入ってるものではないし、漫画家個人で揃えるのはつらいお値段のはず。それに、出版社や雑誌ごとにカラーというか、デフォルトの書体はこれで他はこれを使う、みたいなルールがあったりするので、多分編集部側でやってると思うんですよ。
原稿と同じサイズのイラレのファイルにネームか原稿自体を下絵として読み込んで、レイヤー上で文字を打っていくのかな? その作業を編集者がするのか、外注にやらせるのか。実際どうなんでしょうね?
もしも武本先生のネームに書き間違いがあったとしても、文字起こしをする際、あるいは校正の段階でちゃんと原作の当該箇所と見比べるという作業をしていれば、絶対に防げたはずなのです。ていうかそれが編集者の仕事だと思うのですが。
しかも、雑誌と単行本ではサイズも違うし、雑誌のためにつけたノンブルは打ち直すし、ハシラやアオリも除去するので、校正刷りを新規に出すはずですから、ここでも気づくチャンスはあったのにスルーされてしまった。4巻の乱丁は発生のタイミングが私にはわからないので何とも言えないのですが、「婿/嫁」「四か月/四日」の誤植の責任の99.9%は編集者にあると思います。
こんな辺境Blogをご覧になってはおられないでしょうが、
川崎さん、頑張ってください。
12.29追記:先日発売されたシリウス2014年2月号の目次ページで、武本先生ご自身のコメントとしてこの誤植に触れ、謝られていたそうです。
posted by kemomo at 13:00
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